お店のはなし



アンティークやヴィンテージを扱う仕事をしていると、
時折不思議な気持ちに包まれることがあります。
それがどんな気持ちなのか、言葉で言い表すのはとても難しいのですが。

現地で何時間も目を皿にして歩き回り大事に連れ帰ってきた子たちは、
ひとつひとつ丁寧にクリーニングします。アルコールで隅々まで拭き上げたり
錆を落としたり… 乾いた革や木にはオイルを含ませたり。

アンティークやビンテージ雑貨の買い付けは、汚れたり怪我してしまった
捨て犬なんかを連れ帰ってきて、洗ったりカットしたり手入れをしてあげて、
あぁこんなに可愛い顔してたんだねぇ、気づいてあげられて良かったなぁ、
いい里親さんが見つかりますように。。そんな気持ちと似ています。
ちょっと重たいですか?笑

そしていつもそうやって、せっせと商品をクリーニングしている時にはいつも
「これはあの屋根裏部屋で見つけたやつだ」とか
あぁ、これを売ってくれたマダム素敵だったよなぁ…」とか
自分でも驚くほど鮮明に思い出し、それが今ここに、日本に、
当たり前のような顔をして収まっているのが不思議な気持ちにもなるのです。
あんな遠い国の片田舎で埃をかぶって、でも誰にも見捨てられずにいた物たち…


アンティーク、それは人を惹きつける魅力があったからこそ、
長い時を経ても失われる事なく今日まで残ってきたものです。
それぞれ長い、長いストーリーを持つ物たち。
その魅力や原因を理解しようとする事、「モノ」を通して感じる喜び。
今度はここに来てくれてありがとう、そして、
ここでまたそれを見つけてくれる人たちにもありがとう!
そんな気持ちからこのお店の名前は生まれました。



さて、ここまでこんな風に書いておきながら、
THANK YOU FOR COMINGはアンティークショップではありません。

商品ラインナップの多くはアンティークやヴィンテージですが、
アンティークショップらしくもしたくないと思っていて。
現行品もこれから少しずつ入荷していきます。


正直、古いものというのは古いもの同士まとまっていた方が
手っ取り早くそのもの本来の雰囲気が出ます。
多くのアンティークショップがそうであるように、
朽ちたような色や質感のものだけを集めた方が分かりやすく、素敵で、
私自身そういうお店はとっても好きなのですが…
そういうお店は沢山あるからこそ今私がやり始める意味は見出せなくて。

「アンティーク、ヴィンテージ」というと錆っぽくて埃っぽくて、
それが独特の雰囲気を纏っていて好き、むしろ磨かないで!という方も
もちろん沢山いらっしゃいます。でも逆にそれが理由で少し苦手だったり、
素敵だとは思うけど、自分のお部屋には合わないだろうと思っている人にも
これまで沢山出会ってきました。
私が大阪・北摂にあるアンティークショップでお世話になっていた数年間
フラリと入ってこられたお客様からもう数えきれないほど聞いた言葉
「欲しいなぁ、でもお部屋全体をアンティークで揃えないと合わなさそう」

そんな事ないんです!むしろ現代のシンプルなインテリアの中でこそ
存在感を発揮し、それ一つでお部屋の雰囲気をぐっと素敵にしてくれる
スパイスになってくれるのに。小物だったらさらにそのハードルは下がり、
価格も意外とお手頃なのになぁ。今このデザインを作ろうと思ったら、
もっと高くつくなんはずですよっ。なんて、、、


経年による味や風合いが古いものの魅力。
もちろんそうなのですが、それだけじゃなくて、
今では真似できないデザインだったり、手法だったりもします。

私はそんな「アンティーク好き」な人たち以外にも
純粋に希少なデザインや美しさを楽しんでもらいたいから、
なるべく綺麗にクリーニングしてお出しするようにしています。
現行品と組み合わせた使い方、飾り方の提案も見ていけただけたら嬉しいです。



古いもの、新しいもの、西洋のもの、東洋のもの……
そういったジャンルに捉われすぎず、個々の素晴らしさを見つけてもらえたら。
プロフィールページの「古今東西 国や時代を飛び越えた世界の美しいものたち」
とはそういう意味なんです。


断捨離、持たない暮らし、、そういうスタイルが流行り始めて随分経ちました。
わたし個人的にはシンプルライフ反対派
(もっと贅沢しようよ。これはお金の話ではなくて…。)ですが、
まぁ生活のスタイルは人それぞれ。
でもまず買う時に本当に愛着を感じる物、長年の愛用に耐える物を選んでいれば
そんなに捨てられる物って多くないです。

ただ消費するのではなく、
一緒に育っていけるもの、その人のこれからを象っていくもの。
「物を買う」という選択の時にふと思い出してもらえる、
そんなお店になっていけたらいいなと思います。



saki